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 高分子超薄膜による光物理過程の制御


最近、ナノテクノロジーが盛んに叫ばれているが、当研究室では10年以上も前から、光機能や電子機能をもつ分子をナノスケールの精度で自由に配置することを目指して高分子超薄膜の研究を行ってきた。この研究課題では、高分子単分子膜という分子レベルで極限の薄さ(0.4-1.0 nm)をもつ膜を材料として、ナノ構造の自由構築と光電子プロセスの制御に成功した。単分子膜とその積層膜からなる超薄膜は、ナノ構造を設計構築するという自由度を与えながら、同時にその平面性のために分子機能をマクロ機能として取り出すことができる材料として優れた特徴を有している。将来の実用を考慮すると、有望な機能ナノ材料と期待される。当研究室では、これまでに高分子から成る単分子膜は極めて薄く、均一であるだけでなく、優れた耐熱性、耐久性など、低分子積層膜では実現できない数々の優れた材料物性を持つことを発見しており、1.高分子単分子膜、2.交互吸着膜、3.表面グラフト膜等の高分子超薄膜の開発をおこなっている。これにより、光・電子機能基をナノメートル単位で任意に配置し、電子移動やエネルギー移動など、基本的光電子プロセスを人為的に制御することで、高度な光・電子機能を有する高分子デバイスの開発を目指している。

右上の図は電子励起エネルギーのドナー(フェナントレン)とアクセプター(アントラセン)を導入した単分子層間の距離を変化させて蛍光分光測定を行った結果である。ここで用いたフェナントレン-アントラセン間のエネルギー移動が起こる臨界距離はおよそ2 nmであり、その間のエネルギー移動を人為的に制御するためには、オングストロームからナノメートルの正確さで層間の距離を制御しなくてはならないことになる。ドナー層とアクセプター層の間に不活性の単分子膜をn層挿入することで、層間の距離を変化させた。図から明らかなように、nつまり層間距離の減少とともに、ドナー-アクセプター間のエネルギー移動効率が向上し、アクセプター(アントラセン)蛍光の収率が増大する様子が観察された。このように高分子材料を巧みに利用することで、電子励起エネルギー移動という基本プロセスの効率が見事に制御されることを明確に示された。


さらに電子移動の制御を行った実例を示したのが右図である。電子移動反応は励起エネルギー移動と比較して反応距離が短いため、より厳密な距離制御が要求される。そこで、有機単分子膜としては極限の薄さを達成するポリイミドをベースポリマーとして用い、ポルフィリン、ジイミド間の電子移動を行わせた。これまで、合成によりD-A系を構築した1分子系が報告されてきたが、これは分子集合組織として、層数により電子移動速度を制御することに成功した初めての例となった。同時に、膜構造からえられる距離を根拠にして、電子移動速度の距離依存性を明確に証明することにもなった。

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最近の研究成果
1. T. Ogi, H. Benten, S. Ito, Thin Solid Films, 515, 3107 (2007).
2. T. Ogi, S. Ito, Thin Solid Films, 500, 289 (2006).
3. H. Ohkita, K. Sakai, S. Ito, Trans. Mater. Res. Soc. Jpn., 30, 707 (2005).
4. T. Ogi, R. Kinoshita, S. Ito, J. Colloid Interface Sci., 286, 280 (2005).
5. T. Fushimi, A. Oda, H. Ohkita, S. Ito, Thin Solid Films, 484, 318 (2005).
6. T. Fushimi, A. Oda, H. Ohkita, S. Ito, Langmuir, 21, 1584 (2005).
7. T. Fushimi, A. Oda, H. Ohkita, S. Ito, J. Phys. Chem. B, 108, 18897 (2004).
8. D. Wakizaka, T. Fushimi, H. Ohkita, S. Ito, Polymer, 45, 8561 (2004).
9. T. Ogi, H. Ohkita, S. Ito, M. Yamamoto, Thin Solid Films, 415, 228 (2002).
10. H. Ohkita, T. Ogi, R. Kinoshita, S. Ito, & M. Yamamoto, Polymer, 43, 3571 (2002).

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